問題10 原文
問題 10 S大学の留学生の日本語コースにおいて、最後の5回分の授業をプロジェクトワ
ークに充てることにした。プロジェクトワークの授業計画を記した次の資料を読み、
後の問い(問1~5)に答えよ。
< 資料 >
概要
学習者 B2レベル、14名(多国籍)によるプロジェクトワーク型授業
授業回数 全5回 (90分×10コマ)
タスク まもなく来日する留学生(短期留学生および長期留学生)用に生活
に役立つ情報をまとめ、
「日本で暮らす〜S大学での留学生活をスム
ーズに始めるための手引き〜」
(以下、
「手引き」)としてインターネ
ット上で公開する、または、オンラインで配布する。
授業計画
第1回 【活動①】 タスクを理解する。
(90 分×2) 【活動②】 これから来日する留学生に提供する生活情報として、
どのような情報を提供すべきかを学習者どうしで話し合う。
※まずはブレインストーミングから始め、実際に「手引き」に掲載
する内容を絞りこむ。
【活動③】 役割分担。掲載する内容にしたがって、担当を決め
る。また、3~5名から成る編集チームを結成する。
第2回 【活動④】
(90 分×2) 各担当が自らの作業を推進する。情報、素材集め、および、ドラフト
作成。
【活動⑤】
進捗状況を報告する。残された作業を確認する。
第3回 【活動⑥】
(90 分×2) 「手引き」全体の構成や体裁について話し合う。
【活動⑦】
各項目、記事を清書する。
第4回 【活動⑧】
(90 分×2) 「手引き」全体の第一稿を仕上げる。
ピア・フィードバック及び教師によるコメントを経て、推敲する。
第5回 【活動⑨】
(90分×2) 「手引き」全体の最終稿作成、公開または配布作業へと進める。
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問1 <資料>に記されたプロジェクトワークを遂行する過程で育まれるべき能力として
不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 特定のトピックについて、複数の情報源から必要な内容を取捨選択し、それらの要
約を作成することができる。
2 他者の意見を理解するとともに、自分の考えを論理的に説明し、共通の目標に向け
て建設的に議論し、合意形成を図ることができる。
3 駅、市役所、スーパー、コンビニ等、生活に欠かせない重要拠点へのアクセス方法
を述べたり道案内したりすることができる。
4 特定の読み手を想定し、多岐にわたる内容を分かりやすい構成や展開となるよう工
夫し、接続語などを効果的に用いて、構造的に整った明確な文章を書くことができる。
問2 <資料>に記されたプロジェクトワークに、フォーカス・オン・フォーム(Focus on
Form)での指導を組み込む場合、どのような指導内容が適切か。最も適当なものを、
次の1~4の中から一つ選べ。
1 活動②において、日本において円滑な日常生活を送るのに必要な語彙リストを与える。
2 活動④において、イラストや図などの視覚的要素を効果的に用いる方法について、
講義する。
3 活動②において、グループやクラスで議論を交わしている際の、相づちの打ち方を
指導する。
4 活動④において、「助言」や「勧め」を表す文末表現の機能に注意を促し、運用練
習を行う。
問3 <資料>に記された授業計画の活動⑥~⑨の活動の特徴として不適当なものを、次
の1~4の中から一つ選べ。
1 ジグソー学習の手法が活かされている。
2 プロセス・ライティングの考え方が応用されている。
3 ピア・レスポンスの基本的な考え方が組み込まれている。
4 内容はもちろんのこと、文法的な誤りも扱える。
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問4 <資料>に記されたプロジェクトワークにおいて、教師が担うべき主要な役割とし
て最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 学習者とともに調査を行い、情報収集を主導する共同参加者
2 活動の進捗をモニターし、学習者が行き詰まった際にヒントを提示する調整者
3 最終成果物のあるべき構成を提案して具体化するデザイナー
4 寄せ集められた情報の適切性や妥当性を見定める講評者
問5 <資料>に記されたプロジェクトワークの特徴として不適当なものを、次の1~4
の中から一つ選べ。
1 学習者が自らの経験をリソースとして活用できるという意味で、情報の「当事者性」
が高い活動である。
2 成果物が現実社会に役立ち得ると言う意味で、教室内の練習に留まらない「社会性」
や「公共性」を持つ。
3 学習者がこれまでの留学生活を振り返る機会となるため、その成長過程を測る「縦
断的な個人内評価」の主たる手段として最適である。
4 プロセスの至る所で、「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やりとり)」「話す
こと(発表)」「書くこと」という5種類のコミュニケーション言語活動が統合的に
関与している。
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解答入力
上の原文にある各問の選択肢を確認し、下で選択肢番号を選んでください。
解答・解説(原資料)
以下は解答解説PDFから該当問題の説明を収録したものです。採点後に確認してください。
問題 10(プロジェクトワーク)
問1 正答:選択肢3
選択肢3の「道案内や重要拠点へのアクセスを述べる」は、B2レベル(中上級)の学
習者が 90 分授業を5回受けることで目指されるべき能力とは考えにくく、むしろ、初級向
きである。同時に、プロジェクトワークの主たる目的は、不特定多数に向けた「生活に役
立つ情報をインターネット上で公開、または配布する手引きを作成すること」であるため、
特定の相手との限定的なやり取りによる道案内ができても達成され得るものではない。
他方、選択肢1は、情報を収集して「手引き」として編集・清書する活動そのものに直結し、
選択肢2は、活動②や活動⑥における話し合いと合意形成のプロセスと直結している。選択
肢4は、
「まもなく来日する留学生」という明確なターゲットを読み手に想定し、インターネ
ットや冊子で配布できる構造的な文章を書くライティング能力(活動⑧、⑨)が求められる。
問2 正答:選択肢4
フォーカス・オン・フォーム(Focus on Form)とは、意味のあるコミュニケーション活
動を行っている中で、活動の目的を果たすために、必要に応じて「言語形式(文法や規則)」
に焦点を当てる指導法のことである。今回のプロジェクトワークは「留学生向けの手引き
を作る」ことが目的(意味)であるため、「助言」や「勧め」を意図した表現が多用され
ると想定される。文末表現の形と発話意図を組み合わせる学習法は、「言語形式の機能」
に注意を促すことであり、まさにフォーカス・オン・フォームに適した指導方法である。
選択肢1のような語彙リストは、意味のある活動と結びついた言語形式へのアプローチで
はなく、選択肢2および選択肢3は、言語形式に焦点を当てている活動とは言えない。
問3 正答:選択肢1
ジグソー学習は、「異なる情報を持った学習者同士が、情報ギャップを埋める」プロセ
スを重視した協働学習の手法である。しかし、本プロジェクトでは最初から全体像が意識
されている。さらに、【活動⑥】での全体像の詳細な確認や、【活動⑧】【活動⑨】での
原稿の推敲・仕上げが計画されているため、ジグソー学習の手法とは異なっている。
他方、活動内に組み込まれている【活動⑧】のピア・フィードバックは「ピア・レスポ
ンス」の基本的な考え方そのものである。ここでの推敲は内容面だけでなく文法的な誤り
も対象となるため、選択肢4も当てはまる。このように、他者からのフィードバックを得
ながら推敲を重ねて文章の質を高めていく一連のプロセスは、
「プロセス・ライティング」
の考え方が応用されていると言える。
問4 正答:選択肢2
プロジェクトワーク型授業における教師の役割を問う問題である。プロジェクトワーク
は学習者が主体となって動く「学習者中心」の活動であるため、教師は知識を一方的に教
える講師ではなく、必要に応じて活動を支援する「調整者(ファシリテーター)」として
の役割が求められる。
問5 正答:選択肢3
選択肢3の記述にある「縦断的な個人内評価」とは、一人の学習者の日本語習得・学習
状況を長い期間(数ヶ月〜数年)にわたって観察し、どのように成長を遂げたかを測る評
価のことである。本活動では成果物や協働の過程を評価することはできるが、一人の学習
者の長期的な発達を評価する活動ではなく、縦断的な個人内評価の目的には適していない。
原文はPDFテキスト抽出結果をもとに収録しています。図表・段組み・下線等の視覚的な再現は完全ではない場合があります。