問題17 原文
問題 17 次の資料は、ある日本語学校の学務主任のU先生と、W先生が交わした会話の一
部である。資料を読み、後の問い(問1〜5)に答えよ。
< 資料 >
U: そういえば、W先生のクラスに、気になる学生さんがいるって、言っていま
したね。最初は出席率がよかったのに、突然欠席や遅刻が増え始めたとか。
その後、どうですか。
W: Aさんのことですね。それが、最近はずいぶんよくなりました。一時は、こ
のまま出席率が下がり続けたらまずいと思って、ひやひやしたんですが、急
に落ち着いてきたようです。
U: へえ。何かあったんですか。Aさんと話してみましたか?
W: はい。欠席が多くなった時期は、体力的にも精神的にも大変だったそうです。
アルバイトを始めたものの、うまく行かなくて、店長さんに怒られてばかり
いたと言っていました。そのうえ、アルバイト先は日本人が多く、いつも一
人だったとか…。また、仕事で疲れるので、学校の課題をこなすのもきつく
なって、仕事も勉強もうまく行かず、落ち込んでいたと言っていました。
U: そうですか。a ちょうど、ハネムーン期が終わる頃で、不安定になりがちな
時期とも言えそうですね。でも、どうして、いきなりまた好転したんでしょ
うか?
W: Aさん、先輩のBさんが住むシェアハウスに入れてもらったそうです。Bさ
んはこの学校の卒業生なんですが、今は専門学校に通っています。それで家
賃の負担が軽減されたって言っていました。また、最近はBさんや、Bさん
の友達のCさんに相談したり、別のアルバイト先を提案してもらったりして
いるそうです。
U: よかったですね。でも、油断は禁物ですよ。今後、何らかの形で b サポート
していけるといいですね。
W: はい。私としては、最初のアルバイトを通じて、c Aさんが日本社会に対し
てちょっとした警戒感を覚えてしまった可能性も考慮しなければならない
と感じています。
U: そうですね。それに対して、例えば、どんな活動が考えられるでしょうか?
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W: この学校では、数か月に1度だけですが、学外の日本人との交流会がありま
すよね。とりあえずは、その機会を利用して d 活動内容に工夫を持たせる
ことから始めたいと考えています。
問1 <資料>の下線部 a「ちょうどハネムーン期が終わる頃で、不安定になりがちなタ
イミングとも言えそう」とあるが、このような心理状態と関連した事象を説明するも
のとして最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 カルチャーショックは、異文化接触に際して、誰もが経験する一時的な精神的打撃
であり、これを克服することが、カルチュラル・アウェアネスの第一歩となる。
2 カルチャーショックはある一定の精神状態を表すものではなく、段階的に変化する
ものだと考えられている。
3 カルチャーショックは学習を妨げるものであり、できるだけ回避するようなサポー
トが重要である。
4 カルチャーショックは、ハネムーン期直後のショック期が最大のものであり、帰国
することで解消される。
問2 <資料>のW先生の発言に基づいて考えた場合、Aさんが受けたと考えられるピア・
サポートとして不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 情緒的サポート 2 情報的サポート
3 道具的サポート 4 評価的サポート
問3 <資料>の下線部 b「サポート」の内容として不適当なものを、次の1~4の中か
ら一つ選べ。
1 Aさんに適していると考えられるアルバイト先を探し、そこの責任者と事前に交渉
した上で、Aさんにそのアルバイトを推奨する。
2 学校内やその周辺に生活相談専門のスタッフやカウンセラーがいる場合は、そのこ
とをAさんに知らせる。
3 Aさんの学習状況を見守り、学習を諦めずに継続できるように猶予期間を設けたり
補習を行ったりする等の配慮をする。
4 時折Aさんに話しかけ、Aさんがどれくらい自分を肯定的にとらえているかを聞き、
適宜共感を示す。
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問4 <資料>の下線部 c「Aさんが日本社会に対してちょっとした警戒感を覚えてしま
った」に関連して、このような現象が第二言語の学習や習得に及ぼし得る影響として
不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 学習者が目標言語集団との社会的・心理的距離を縮められなければ、言語的収斂が
起きにくく、第二言語の習得が十分に促進されない可能性が出てくる。
2 学習者が目標言語集団への警戒感を抱けば、それが否定的なビリーフの形成につな
がり、第二言語学習を阻害し得る。
3 学習者が目標言語集団への警戒感から第二言語不安を発展させた場合には、それが
情意フィルターとなって、学習を阻害し得る。
4 学習者が日本社会とのつながりを強めていけない状況は、社会的リソースを利用す
る機会の損失につながり得るため、不利である。
問5 <資料>の下線部 d「活動内容に工夫を持たせる」に関して、どのような活動なら
当該の目的に見合った活動であると考えられるか。最も適当なものを、次の1~4の
中から一つ選べ。
1 交流会に参加した日本人と学習者がそれぞれ街に出て、おもしろいと思った物の写
真を撮ってきて、発表する。
2 交流会に参加した日本人と学習者が全員で協力して、日本で生活するときに戸惑い
がちなシーンを考え、ミニ・ドラマを作成する。
3 交流会に参加した日本人と学習者が協力して、日本人参加者の故郷を紹介するスラ
イドを作り、発表する。
4 交流会に参加した日本人のチームと学習者のチームに分かれ、日本の慣習に関わる
テーマを定め、ディベートを行う。
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解答入力
上の原文にある各問の選択肢を確認し、下で選択肢番号を選んでください。
解答・解説(原資料)
以下は解答解説PDFから該当問題の説明を収録したものです。採点後に確認してください。
問題 17(留学生の不安と各種サポート)
カルチャーショックなどの心理的変化や、それに対する「ピア・サポート(仲間による
支援)」の役割、そして学習者の不安を低減するための具体的な支援方法を問う問題であ
る。
問1 正答:選択肢2
カルチャーショックに関する理解を問う問題。「ハネムーン期」という言葉から、異文
化受容のプロセスの一つ、U字曲線を想起できるかが鍵となる。カルチャーショックは固
定された精神状態ではなく、ハネムーン期、ショック期、回復期、適応期といった段階を
経て動的に変化するものだと考えられている。
問2 正答:選択肢4
ソーシャル・サポートの種類として、ハウス(J. S. House)は、「道具的サポート」「情
緒的サポート」「情報的サポート」「評価的サポート」の4種類を挙げた。これに基づき、
A さんが受けたサポートを整理すると、
情緒的サポート:Aさんの相談にのること
情報的サポート:別のアルバイト先について情報共有すること
道具的サポート:シェアハウスに同居させて家賃負担を軽減すること
選択肢4の「評価的サポート」に該当する記述は、先輩Bさんたちとの関わりの中には見
られない。
問3 正答:選択肢1
学習者支援における教師の適切な役割を問う問題。選択肢1のように、教師自らが特定
のアルバイト先を探し、経営者と事前交渉して推奨することは、依存関係の創出や責任問
題を招き得る過剰な介入である。相談窓口の紹介(選択肢2)や学習上の配慮(選択肢3)
にとどめるのが望ましい。
問4 正答:選択肢2
目標言語集団への警戒心は「情意フィルターの強化」(選択肢3)や「社会的リソース
アクセスの損失」(選択肢4)につながり得る。ビリーフは言語学習に対する固定観念や
信念のことなので、目標言語集団への警戒感とは異なるレベルの話であり、ビリーフを直
に破壊するとは考えにくい。
問5 正答:選択肢2
社会心理学者のオールポート(Allport)の「接触仮説(Intergroup Contact Hypothesis)」
に基づくと、異なるグループ間の偏見や警戒感を低減させるためには、(i)「対等な立場
(Equal Status)」で(ii)「共通の目標に向かって相互に協力(Cooperation)」する活動
が不可欠とされる。
選択肢2の活動は、日本人と学習者が「対等な立場」のパートナーとして双方の日常の戸
惑い場面を持ち寄り、一つのミニ・ドラマを共創する「共通の目標に向けた協働」である。
原文はPDFテキスト抽出結果をもとに収録しています。図表・段組み・下線等の視覚的な再現は完全ではない場合があります。