問題5 原文
問題5 次の文章を読み、下の問い(問 1~5)に答えよ。
外国語や第二言語の学習において語彙の知識が重要であることは言うまでもない。人間
の記憶に収められた語の音韻、形態、意味、統語等の情報はばらばらに蓄えられているの
ではなく、a ネットワークを形成していると考えられている。このことは、人々の連想
(association)の在り方を調べることによって確かめられるという。例えば、b 「銀行」
という語を聞いた後より、「野菜」という語を耳にした後のほうが、「果物」という語を
想起するための時間が短くて済むといった現象は、私たちが語彙をいかに記憶しているか
を探る手がかりとなる。
記憶における語彙ネットワークは、上述のような関係だけではなく、語と語の共起関係
に基づくものもある。比較的頻繁に共起する語と語の組み合わせはコロケーションと呼ば
れるが、c 一口にコロケーションと言っても、語と語の結合の強度や意味の観点からいく
つかのタイプに分けられる。
語と語の共起には、 d 選択制限の問題も絡んでいる。例えば、主観的な感情や感覚を
表す語が非過去形で述部に現れた場合、その文の主語は一人称となる。この例にみられる
ように、e 日本語の文の述部には、主語やその他の成分の人称情報が織り込まれているも
のが少なくない。
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問1 文章中の下線部 a「ネットワーク」を考慮した語彙指導の例として不適当なものを、
次の1~4の中から一つ選べ。
1 新出単語の導入の際、既習の類義語にも言及した。
2 時間的分散を考慮したリトリーバル学習法を取り入れた。
3 覚えるべき語や表現をチャンクとして提示した。
4 授業中、教科書に出てきた重要な語を取り上げ、語彙マッピング活動を実施した。
問2 文章中の下線部 b における「果物」と「野菜」の関係に最も近いものを、次の1
~4の中から一つ選べ。
1 「医師」と「看護師」
2 「教育」と「生徒」
3 「おいしく」と「食べる」
4 「落ち着かない」と「落ち着いて」
問3 文章中の下線部 c の観点から見て、他と性質が異なるものを、次の1~4の中から
一つ選べ。
1 「妹は甘いものに目がない」における「目がない」
2 「図に乗って文句を言っていると嫌われるよ」における「図に乗る」
3 「それは骨が折れる仕事だった」における「骨が折れる」
4 「腹が減っては戦ができぬ」における「腹が減る」
問4 文章中の下線部 d「選択制限」の例として不適当なものを、次の1~4の中から一
つ選べ。
1 「並んでいる」という述部の主語は、人であれ生物であれ事物であれ、通常、何らか
の複数のものである。
2 修辞的効果を狙った文学的な表現でない限り、「飲む」という述語のヲ格には、液状
の物体を表す名詞がくる。
3 話し手が、自分は知らないが相手が言及したものを指示する場合は、ソ系の指示表現
を用いる。
4 「見る」という述語の主語の典型は、意志を持つ人や生物である。
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問5 文章中の下線部 e の例として不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 原則として、尊敬語を述部に含む節の主語に一人称は現れない。
2 日常会話における発話では、「(…と)思う」という述語の主語は一人称である。
3 本動詞としての「くれる」のニ格は、原則として、一人称である。
4 日常会話における発話では、接尾辞の「~がる」を述部に含む場合、主語に一人称は
現れない。
解答入力
上の原文にある各問の選択肢を確認し、下で選択肢番号を選んでください。
解答・解説(原資料)
以下は解答解説PDFから該当問題の説明を収録したものです。採点後に確認してください。
問題5
問題文は、メンタル・レキシコン(心的辞書・心内辞書)に関する文章である。メンタ
ル・レキシコンにおいて、語彙はネットワーク状に格納され、意味的に関係が深い語と語
は、心的ネットワーク上の結びつきも強いと考えられている。
語彙ネットワークの形成においては、コロケーションのような共起に基づく関係性(統
合的関係 syntagmatic relation)と関連語、類義語、対義語(反意語)などの意味的結合
(範列的関係 paradigmatic relation)とが関わっている。語彙習得においては、共起に
基づく統合的なネットワークが形成され、その後、範列的なネットワークが形成されると
言われる。
問1 正答:選択肢2
語と語の意味的関連性に注意を向けさせる練習や、複数の語を含むかたまり表現をひと
まとまりに扱う練習は、メンタル・レキシコンの語彙ネットワークを考慮した練習方法で
ある。リトリーバル学習法は、一度記憶した事項を、何も参照せずに引き出す練習方法で
ある。思い出す行為そのものが、理解を深め、記憶の定着につながるとされる。語彙ネッ
トワークの形成を主たる目的とした練習ではない。
問2 正答:選択肢1
「果物」と「野菜」は、「食べ物」等の上位語に包含される、同じ階層に属する語であ
る。「医師」と「看護師」も、「医療従事者」や「病院で働く人」等の上位概念のもとに
包含される、同じ階層に属する語である。 なお、下線部のように、先行提示された刺激に
よってターゲットとなる刺激の処理が影響を受けることを「プライミング効果」という。
問3 正答:選択肢4
ここで用いられている「目がない」は、「目」と「ない」という各構成語から全体の意
味を説明することができない。また、「*目がある」「*目が減る」等、語を入れ替えたり
他の修飾語を挿入して用いたりすることは、原則として許容されない。すなわち、語と語
の結びつきが固定的である。「図に乗る」「骨が折れる」も同様である。その意味で、こ
れらは極めて慣用句的である。他方、「腹が減っては」の「腹が減る」は「おなかが減る」
と言ったり「腹がそれほど減らない」等、語を入れ替えたり、修飾語を挿入したりするこ
とができる。その意味で、慣用句とは言えない。
問4 正答:選択肢3
選択制限とは、語(句)の意味の観点から、共起し得る語が限られること。例えば、「男
の子がボールを投げた」は自然な文だが、「男の子が川を投げた」や「男の子が正直を投
げた」は不自然な文に感じる。これは、「川」や「正直」が「投げる」対象としては不適
切だからである。
問5 正答:選択肢3
日本語の文の述部には、主語やその他の成分の人称情報が織り込まれているものがある。
錯乱肢に挙げられたものは代表的な例であるので、覚えておこう。
原文はPDFテキスト抽出結果をもとに収録しています。図表・段組み・下線等の視覚的な再現は完全ではない場合があります。