問題7 原文
問題7 次の文章を読み、下の問い(問1~5)に答えよ。
X 先生が、経験豊富な Y 先生に授業のやり方について相談している。
X 先生:最近は授業で毎回聴解問題をやっていますが、結構難儀しています。
できる学生が多少はいるんですが、中には全然わからないっていう顔をして
いる学生もいて。
Y 先生:あっ、そう。確か、a B1後半レベルのクラスでしたよね。
X 先生:はい。b トップダウン・モデルでの情報処理を促したいと思って、先輩に教
えてもらった通りにやっているんですが、クラスの半分ぐらいの学生は、
わからないと言うばかりで。
Y 先生:もしかして、聴解素材のレベルが学習者に合っていないんじゃないですか?
X 先生:レベルって重要なんですか。
Y 先生:とても大事ですよ。特に、既知語率は重要ですね。一説によると、文章を
適切に理解するには、96%程度の既知語率が必要とされているらしいですよ。
いずれにせよ、未知語率が多い文章は、トップダウン・モデル用のテクスト
にはなりませんね。
X 先生:そうなんですね。大学進学を目指している学生が多いクラスだから、難しめの
素材のほうがいいと勘違いしていました。あっ、そのせいかな。多技能統合型
の授業を実現しようと思って、大意把握の後で、ディスカッションやロールプ
レイの産出系の活動時間を設けているんですが、うまく行ったことがあまりな
いんです。
Y 先生:c トップダウン式の理解が成立したからと言って、受容した内容が直ちに産出
できるかと言えば、必ずしもそんなことはないと思いますよ。トップダウンの
理解が成立した後に、d 別の活動を差しはさんでから産出活動へと移行して
みたらどうですか。それに、中級以降は、段落レベルでの談話のまとまりにも
徐々に意識を向けさせたほうがいいので、e 結束性に着目した指導も取り入れ
るといいですよ。
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問1 文章中の下線部 a「B1後半レベル」について、2021 年、文化審議会国語分科会に
よってとりまとめられた「日本語教育の参照枠報告」に基づけば、「理解すること:
聞くこと」の「B1後半レベル」の記述に相当するものとして最も適当なものを、次
の1~4の中から一つ選べ。
1 意味が取れるように間を長くおきながら、非常にゆっくりと注意深く発音してもら
えれば、発話を理解できる。
2 生であれ、放送であれ、身近な話題でなくとも、個人間、社会、学問、職業の世界
で通常出会う話題について、共通語で話されれば理解できる。周囲の極端な騒音、不
適切な談話構成や慣用表現だけが理解を妨げる。
3 もし、発話がはっきりとゆっくりした発音ならば、最も直接的な優先事項の領域
(例:ごく基本的な個人や家族の情報、買い物、その地域の地理、仕事・雇用)に関
連した句や表現が理解できる。
4 毎日やふだんの仕事上の話題について、簡単な事実関係の情報を理解できる。もし、
大体が耳慣れた発音で、明瞭に話されていれば、一般的なメッセージも具体的な詳細
も理解できる。
問2 文章中の下線部 b について、トップダウン・モデルで情報を処理するように促す活
動として不適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 聴解活動に入る前に、聴解素材のテーマについて既に知っていることを話すように
促す。
2 聴解素材を聞かせる前に、聴解素材に現れる重要文型を導入し、軽く練習させる。
3 これから耳にする聴解素材の内容をキーワードやタイトル等から推測させる。
4 聞き取るべき内容に意識が向くように、聴解素材の内容についての質問を予め投げ
かける。
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問3 文章中の下線部 c「トップダウン式の理解が成立したからと言って、受容した内容が
直ちに産出できるかと言えば、必ずしもそんなことはない」ことの理由として考え得
る最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 聞いた内容を保持しておくことは極めて難しく、記憶するための認知的負荷が大き
すぎるから。
2 多技能統合型の授業では、インプット系の活動よりアウトプット系の活動を先行さ
せるのが一般的だから。
3 聴解において、学習者は機能語より自立語のほうを拾って聞く傾向があるため、聴
いた内容をただちに適切な言語形式に落とし込んでアウトプットするのは難しいから。
4 多技能統合型の授業におけるインプット系の活動として、まだ聴解しか実施してお
らず、読解活動が未実施であるから。
問4 文章中の下線部 d「別の活動」の候補として不適当なものを、次の1~4の中から
一つ選べ。
1 ディクテーション
2 シャドウイング
3 要約練習
4 重要な語彙や文法事項に関する練習問題
問5 文章中の下線部 e「結束性に着目した指導」で取り上げ得る項目として最も適当な
ものを、次の1~4の中から一つ選べ。
1 聴解素材で用いられている複文を取り上げ、その複文構造を分析させる。
2 聴解素材で用いられている指示詞や接続詞に注意を向けさせる。
3 段落ごとに小見出しを付けるというタスクを実施する。
4 聴解素材から知り得た情報にさらに精緻化推論によって情報を付加して、より深い
理解へと導く。
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解答入力
上の原文にある各問の選択肢を確認し、下で選択肢番号を選んでください。
解答・解説(原資料)
以下は解答解説PDFから該当問題の説明を収録したものです。採点後に確認してください。
問題7
日本語教育の参照枠、トップダウン・モデルとボトムアップ・モデルの情報処置、聴解
練習のさせ方、結束性等が盛り込まれた総合問題である。
問1 正答:選択肢4
「日本語教育の参照枠」の内容は、しっかり押さえておこう。B1 は「自立した言語使用
者」の段階である。キーワードを見つけ、要点を押さえるようにするとよい。
問2 正答:選択肢2
トップダウン・モデルでは、学習者が自らの既有知識と照らし合わせながら、文章の情
報を予測したうえで処理していくことが期待される。そのため、選択肢1や3のように、
聞く前にスキーマの活性化をしておくことは、トップダウン・モデルの聴解へと導くため
のステップになる。また、聞き取るべき内容を限定し、目的意識を持って聞くように促す
ことも、内容に関する予測や推測を促すことにつながる。
他方、事前に文型に注目させれば、文章の内容についての予測・推測をしようとする気
持ちよりも、言語形式の細部へと注意を引き付けがちとなり、ボトムアップ・モデル寄り
のアプローチになりやすい。
問3 正答:選択肢3
聴解においては、情報処理スピードを操るのは聞き手ではなく話し手である。また、助
詞やその他の機能語は弱く発せられる傾向があり、聞き取りにくい場合も多い。そのため、
学習者は比較的目立って発せられる自立語を拾うように聞く傾向があると言われる。
問4 正答:選択肢3
機能語等の細部にも注目しなければならない聞き方をさせることで、言語形式に対する
気付きを促し得る。要約は、言語形式や細部に注意させるというより、内容理解を中心に
据えた問題である。
問5 正答:選択肢2
結束性とは、指示詞や接続詞などによって文と文、段落と段落が意味的につながる性質
である。そのため、それらに注意を向けさせる活動が結束性への指導となる。
原文はPDFテキスト抽出結果をもとに収録しています。図表・段組み・下線等の視覚的な再現は完全ではない場合があります。